私たちは、何か大切なこと、嬉しいことを待つときには、その日までを指折り数えたり、カレンダーに印をつけたりして、「早く来ないかな」と思うことでしょう。逆に、辛い何かに向かうときの気持ちは、その日ができることならきてほしくないと思うのではないでしょうか。
典礼では今日から「待降節」となりイエス様の誕生を【待つ】、【準備する】ことを黙想する【時】を迎えます。毎年迎えるクリスマスですが、どのような気持ちで迎えるかと、改めてイエス様の誕生を【待つ】思いを新たにしていけたらいいかと思います。
きょうのみことばは、「主の来臨」がいつなのか分からないから「目を覚ましていなさい」とイエス様が言われる場面です。きょうのみことばの前に「その日、その時は、誰も知らない。天の使いたちも、子も知らない。ただ父だけが知っておられる」(マタイ24・36)とあります。イエス様は、「おん父しかご存じではない【その日、その時】がいつ来てもいいように用意しておきなさい」と人々にみことばを話されます。
きょうのみことばは、イエス様が、「人の子が来臨する時は、ちょうどノアの時と同様である。」と話される場面から始まります。イエス様の話を聞いていた人々は、「ノアの時と同様である」と聞いて、「また、全地を覆うような洪水が襲ってくるのか」と思ったのではないでしょうか。人々は、イエス様からエルサレムの神殿が崩壊すること、メシアが現れることなど、【終末】が近づいていることを聞き、その日がいつ来るのかと不安を感じたことでしょう。
イエス様は、「洪水の前、ノアが箱船に入るその日まで、……彼らは何も気づかなかった」と言われます。おん父は、ご自分が創造された人々が「堕落し、暴虐に満ちていた」(創世記6・11)ので、ノアに命じて箱船を作らせます。しかし、ノアの家族以外の人々は、いつものように堕落した生活を送っていたのです。きっと、彼らは、ノアの家族が何のために、箱船を作っているのか分からなかったでしょうし、嘲笑っていたのかもしれません。
イエス様は、ユダヤ人たちが知っている「ノア」の話しをされ、「ノアが箱船に入るその日まで」と話されながら、「【その日】が来てからではもう遅い、手遅れですよ」と彼らに話されているのではないでしょうか。イエス様は、毎日の生活を回心することなく、おん父のみ旨から離れた生活をし続けていると、いざ、人の子が来臨するときには、「ノアの洪水」の時のように滅ぼされてしまうと言われているのでしょう。
イエス様は、続けて「その時、2人の男が畑にいると、1人は連れて行かれ、1人は残される。……」と話されます。人々は、イエス様のこの話を聞いて「どういうことだろう。なぜ、同じような仕事をしていたのに、どこに違いがあったのだろう」と思ったことでしょう。イエス様は、彼らの仕事、行為について言われたのではなかったのです。イエス様は、彼らがその行いをどのような気持ちで行っていたのか、ということを話されたのではないでしょうか。私たちは、何かを行うときに、「前向きに好意を持って行うか」、仕方ないからと「いやいやながら行うか」という2つの「行い」があるのではないでしょうか。彼らの行いは、「おん父のみ旨を思って行ったか」という違いがあるのではないでしょうか。
おん父は、私たちが毎日の生活をどのような気持ちで行っているのか、ご自分の方に向かって歩んでいるのか、それとも別の方に向かって歩んでいるのかをご存知なのです。イエス様が言われた【連れて行かれた】人は、おん父のもとから離れ続けた人だったのかもしれません。
イエス様は、「だから、目を覚ましていなさい。いつの日、主が来られるか、あなた方は知らないからである」と言われます。イエス様は、「だから」と言われ、人々に強調され、【目を覚ましていなさい】と言われます。これは、いつも起きているという意味ではなく、「おん父の方に向いていなさい」という意味ではないでしょうか。パウロは、「ですから、闇の業を捨て、光の武具を身につけましょう。……日中歩くように、慎み深く生活しましょう」(ローマ13・12〜13)と言っています。私たちは、「目を覚ましている」というとき、目を通して【光】を感じます。この【光】こそが【三位一体の神】なのではないでしょうか。パウロは、私たちが「【光の武具】を身につけることは、『主イエス・キリストを身にまとう』ことになるのですよ」と言っているのでしょう。
イエス様は、さらに「……家の主人は、目を覚ましていて、家に忍び込ませわしない」と言われます。ここでもイエス様は、【目を覚まして】と言われます。イエス様は、【人の子の来臨】がいつ来るのか分からないから、【目を覚まして】、「【光】を体に入れ込みなさい」と言われているのでしょう。イエス様は、私たちの中に「おん父」がおられることを感じられるとき、私たちを受け入れてくださるのです。私たちは、【目を覚まし】、【光の武具】をつけてイエス様の誕生を待ち望むことができたらいいですね。
