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キリスト教知恵袋

「第二パウロ」について

 新約聖書には27の文書が含まれていますが、そのうちの約半分にあたる13文書が使徒パウロによって書かれた、いわゆるパウロ書簡と呼ばれるものです。パウロは、イエス様とほぼ同時代に生きたユダヤ人で、初めはキリスト教を迫害していましたが、ダマスコ途上で回心した後は、熱心なキリスト者として、その生涯を宣教活動にささげました。

 パウロが書き残した13の書簡はさまざまに分類され、名前が付けられていますが、その分類のひとつが「第一パウロ」と「第二パウロ」です。「第三パウロ」は存在しません。まず「第二パウロ」とは、「パウロが書いたと言われてはいるが、本当のところ、パウロが著者であることに疑問が残る」6つの書簡(エフェソ、コロサイ、テサロニケ二、テモテ一・二、テトス)の総称です。これに対して「パウロが著者であることに疑問がない」と言われる7書簡(ローマ、コリント一・二、ガラテヤ、フィリピ、テサロニケ一、フィレモン)を「第一パウロ」と呼ぶことがありますが、この名称は一般にはあまり使われません。

 「第二パウロ」のなかには、「テサロニケの信徒への手紙二」のように「わたしパウロが、自分の手で挨拶を記します」等と、いかにもパウロが書いたと思わせる文面を持つ書簡もありますが(3・17参照)、それでも文体・用語・内容などから、「第二パウロ」と呼ばれる書簡群は、パウロが著者であることに疑問が持たれ続けています。

ここで注意していただきたいことは、たとえパウロが書いたものではないことが証明されたとしても、「第二パウロ」と呼ばれる書簡群がキリスト者にとって聖なる書物であることに、なんの変わりもないということです。

ここで、パウロ書簡の他の分類方法に触れておきましょう。その主なものは下記のとおりです。

  • 「四大書簡」:名称が示すとおり、内容的にも長さの面からも、パウロ書簡の中心となる重要な書簡である、ローマ、コリント一、コリント二、ガラテヤの4書簡の総称です。
  • 「獄中書簡」:パウロが獄中で書いたと言われる、エフェソ、コロサイ、フィリピ、フィレモンの4書簡の総称です。これらの手紙には、パウロが獄中で記したことを示す箇所が含まれています(エフェソ6・20、フィリピ1・13など参照)。
  • 「司牧書簡」:司牧者たちに宛てて書かれた、テモテ一、テモテ二、テトスの3書簡の総称です。

 

回答者=鈴木信一神父(聖パウロ修道会)

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