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キリスト教知恵袋

典礼祭儀に用いられるろうそくについて

 一般的に古い時代から、ろうそくは夜の闇や暗い場所において生活を営むために必要なあかり(照明)として用いられてきました。最近では電気照明がほとんどで、実用的な理由でろうそくを灯すことは少なくなっていますが、他方では象徴的な意味から宗教的な祭儀にも採り入れられてきました。そして今日では、ろうそくと言えばむしろ象徴的な理由において、宗教的な祭儀のために用いられることが多くなってきています。

 ヒエロニムスによると、キリストは「世に来てすべての人を照らす」(ヨハネ1・9)まことの光であるというシンボルから、東方の教会において4世紀には、福音朗読のときに、ろうそくが灯されていました。また、ほぼ同時代にローマの教会において、福音朗読者が聖書を奉持して朗読台に向かうとき、二人のろうそく持ちが先導する習慣も見られたことが指摘されています。さらに、ろうそくは、祭壇の前後、両脇にも灯されるようになりましたが、祭壇の上にろうそくが灯されるようになったのは、11〜12世紀以降のことと言われています。それは、祭壇の上で聖なることが行われていることを示すため、また祝いの喜びを表わすためです。

 教皇ピオ5世のミサ典礼書(1570年)では、祝祭の荘厳さに応じて、祭壇の上に、2・4・6という偶数の本数のろうそく(教区司教が司式するときには7本)という数が規定されました。

 現行のミサ典礼書の総則(1969年)においても、「祭壇上もしくは祭壇の近くに、少なくとも2本、あるいは4本もしくは6本、またその教区の司教が司式するときには7本、火をともしたろうそくを立てるものとする」(79)という法規が維持されています。

 けれども、これらのろうそくの使用に関する法規は、教会の伝統的慣習に基づくローマ典礼の標準形を示すためのもので、典礼(秘跡)の有効性に関わるものではありません。ろうそくが1本しかない場合、また野外ミサなどでろうそくが消えたりしたとしても、心配する必要はありません。ただし、このような典礼(秘跡)の有効性に関わらない補助的な法規であっても、典礼的意味が込められた一つの信仰の表現ですから、できる限り遵守していく心構えを持つことは大切なことです。

回答者=白浜満司教

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