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デジタル時代の福音宣教とAI 〜会員たちのコラム〜

要約
 キリスト教徒にとって、福音宣教はキリストご自身がメッセージであるため、欠かせないコミュニケーション活動です。現代では、デジタル環境やSNSを通じて「良き知らせ」を広める機会が増えています。この使命を果たすため、教会はイノベーションを宣教上の要請として捉え、印刷物からAIまで、時代に合わせた技術を駆使してきました。しかし、AIなどの技術は人間の尊厳に奉仕する道具であり、福音宣教の核心である人間的な出会いを大切にしなければなりません。教会は、福音への忠実さ、司牧的識別、そしてイノベーションの責任ある管理という3つの柱に基づき、技術を福音の愛を伝えるために活用する必要があります。

 キリスト教徒にとって、コミュニケーションは欠かすことのできない要素です。キリストご自身が「人となられたみことば(ヨハネ1:14)」であり、ご自身がメッセージであり、同時にメッセンジャーでもあります。そして、人類との新たな関係を築いてくださいました。この意味において、福音宣教とは、イエス・キリストの「良き知らせ」を、それぞれの状況下で人々の心に響く言葉で伝えることです。ですから、福音を説き、告げ知らせることは、特にデジタル大陸、すなわちSNSにおいて、真実と喜びに満ちた方法で神の愛を世界中に広める機会となります。

 例えば、パウロ6世は使徒的勧告『福音宣教』(1975年)の中で、「教会は福音を告げ知らせるために存在する」(EN, 14)と述べ、その告知は、福音を受け入れる文化に常に配慮した多様なコミュニケーション形式を通じて実現されることを強調しました。そのため、私たちパウロ会士やパウロ会司祭は、自らの人生を通じてコミュニケーション手段の中に身を置き、キリストの福音を生き、考え、説いています。さらに、教皇フランシスコは使徒的勧告『福音の喜び』(2013年)で、「宣教の鍵となる司牧」(EG, 33)の重要性を強調しました。これは、福音のメッセージをすべての人に届けるために、方法と構造を刷新する能力を指します。

 このように、コミュニケーション、イノベーション、人工知能、そして制度的な戦略を統合することで、私たちは現代の課題に応えるだけでなく、「全世界に行って、すべての造られたものに福音を告げ知らせなさい」(マルコ16:15)という主の使命への忠実さを再確認するのです。

 この観点から、イノベーションは単なる流行への適応ではなく、宣教上の要請として理解されなければなりません。教会は初期の時代から、修辞学、印刷物、ラジオ、そしてインターネットに至るまで、利用可能なあらゆる言語を駆使して、「だから、あなたがたは行って、すべての国の人々を弟子にしなさい」(マタイ28:19)というキリストの使命を継続してきました。今日、イノベーションは、デジタル環境や新しい技術との対話を避けては通れません。新しいデジタル宣教者である私たちは、イエスの福音を生き、説くことに献身するべきです。

 さらに、人工知能(AI)は重要な位置を占めています。教皇フランシスコが2024年の「世界広報の日」のメッセージで述べたように、AIは情報の生産と共有の方法において「質的な飛躍」を表しており、倫理的、司牧的な識別を必要とします。AIを責任ある形で利用することで、メッセージのパーソナライズや、社会的・文化的背景の分析、そして新たな対話の道を開くことによって、福音宣教を促進できます。しかし、コミュニケーションを人間的な出会いを欠いた技術に還元してしまう危険性もあります。そのため、教会は常に技術を人の尊厳と福音宣教の使命に奉仕させるべきです。

 この道が実を結ぶためには、伝統とイノベーションを統合する制度的な戦略が必要です。教会の制度的なコミュニケーションは、以下の3つの柱に基づいているべきです。

 1. 福音への忠実さ: 告げられる内容がその信ぴょう性と真実性を保つことを保証します。
 2. 司牧的識別: 手段と表現方法を、福音、教導権、教会の伝統、そして具体的な現実の光に照らして批判的に評価します。
 3. イノベーションの責任ある管理: AIやその他のリソースを、神との出会いと証しの経験に取って代わるものではなく、それを支援する道具として用います。

 このように、コミュニケーション、福音、イノベーション、人工知能の関係は、単なる道具的なものではなく、深く神学的かつ司牧的なものです。教会にとって、コミュニケーションとは、新しい文化や人間環境においてキリストの証しを現代化し、「みことばの受肉」を続けることです。

 『福音の喜び』でフランシスコ教皇が思い起こさせているように、「教会は、改宗を迫ることによってではなく、魅力によって成長する」(EG, 14)のです。したがって、真の制度的戦略は、技術的なツールを習得することだけにあるのではなく、真に人間的な出会いの場を創造する能力にあります。そこでは、イノベーションは親密さの手段となり、AIは使命を支援するものに変わり、そしてコミュニケーションは、福音の核心であるイエス・キリストにおける満ち足りた人生に忠実であり続けます。神の「みことば」が私たちに希望を与え、神の愛を必要とするすべての人に福音を伝えるために、もっと微笑むよう私たちを招きますように。神が常に祝福してくださいますように。

ホルヘ・ルイス・フォレロ・マルドナド(ブラジル管区司祭)

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