1 略歴
*1955年9月、シカゴ生まれ。数学の学士号を取得後、司祭を志し、聖アウグスチヌス修道会に入会。教会法で博士号を取得しました。英語、スペイン語、イタリア語など多言語に堪能です。その後、聖アウグスチヌス修道会のシカゴ管区長を経て、2001年~2013年にかけて十二年間、同会の総長を務めました。
*アウグスチノ会では、それぞれの場の責任者、養成中の学生たちに注意深く耳を傾け、いつもそばにいてくれて、必要がされるときにはリーダーシップを発揮される父親的な存在。
*レオ14世は、ペルーでの司牧経験、修道会総長としての行政手腕、性虐待問題への取り組み、そして司教省長官としての司教人選の改革など、カトリック教会への多岐にわたる貢献と業績を積み重ねてきました。新教皇は、「シノダリティ」(共に歩む教会)と前教皇フランシスコの改革路線への支持を表明しており、より包括的で参加型の教会を目指す意欲を示しています。
2 レオ14世として
*聖年にあたる今年2025年に第267代教皇に選出され、レオ14世を名乗りました。この名前が教会の伝統の中でどのようなメッセージを伝えているのか、つまり19世紀後半に在位したイタリア出身のレオ13世がどのような教皇であったのかについて今関心が高まっています。
*レオ13世はその在位25年の間に発布された回勅の数だけでも際立っているのですが(85前後)、その中で1891年5月に発布された回勅「レールム・ノヴァールム」(新しい事柄の意)は現在に至るまでのカトリック教会の社会教説を方向付けたものです。つまり教会が宣ベ伝える救いは復活のいのち、永遠の生命にあずかる希望であることはもちろんですが、私たち一人ひとりのこの世のいのちの本来の豊かさにも教会は深い関心を寄せていることを示したのです。その背景には産業構造の変化により、時代が大きく変わっていくなかで搾取され苦しんでいる労働者たちの存在がありました。彼らの尊厳を守り、社会正義の実現をめざして教会が新たな、そして大きな一歩を踏み出したあの時代において、レオ13世はその舵を切った教皇の一人だったと言えるかと思います。
レオ14世は選出後、枢機卿団との最初の会見(5月10日)の中で次のように語っています。「現代の教会は、もう一つの産業革命と、人工知能の発展に答えるために、その社会教説の遺産をすべての人に示します。人工知能は、人間の尊厳と正義と労働の擁護にとって新たな問題をもたらしているからです。」
*新教皇は選出後、バルコニーからのあいさつのなかでご自身が聖アウグスチノの息子であると述べられ、司教聖アウグスチノのことばを引用されました。「皆さんのために私は司教ですが、皆さんとともに私はキリスト信者です。」これは聖アウグスチノの説教340からの引用で、聖アウグスチノが自分の司教叙階記念日のミサで行った説教の冒頭にある一文です。自分は神の民への奉仕の役職と責任をゆだねられた者として司教であり、同時にすべての信者の皆さんとともに同じ信仰を持ち、恵みに生かされて歩む仲間である、これが自分のアイデンティティであると語った箇所です。
*その人物像は、控えめながら地球規模の感覚を備え、穏健でバランスの取れた人柄で知られています。司牧的な指向、謙虚さ、そして聴く能力で評価されています。多くからは「伝統と開放性の間 の均衡を重視する中道と見られており、教皇庁内での橋渡し役を果たすことが期待されます。その関心事は、環境問題や貧困層・移民の支援など、前教皇フランシスコが描いた理想像と大いに一致します。指導の手法は、温和で現実的、静かさが特徴と言われます。一言で表現するなら、穏やかで開放的な積極性でしょうか。ペルーでの長い経験から、「アメリカ人の中でも最もアメリカ人らしくない」とも評されています。