1 真実の伝達
*真実の伝達に関する権利というものは、無条件のものではありません。一人ひとりの人間がその生活を福音の兄弟愛の掟にかなうものにしなければならないからです。だから、具体的な状況において、真実を求める人にそれを明かすのが適当であるか否かをこの兄弟愛の掟に基づいて判断しなければなりません。
*情報あるいは伝達を求める人の願いに応じるか否かは、愛と真理への尊敬とをもって決定する必要があります。他人の善益や安全、プライバシーの尊重、共通善などのためであれば、知られてはならないことを伝えなかったり控え目に話したりしても差し支えありません。つまずきを避ける義務があるので、秘密を厳守することがしばしば必要になります。知る権利を持たない者に真実を明かす義務はだれにもありません。
*ゆるしの秘跡の秘密は神聖はものであり、いかなる口実をもっても漏らされてはありません。「秘跡上の秘密は不可侵です。したがって、聴罪司祭は、ことばまたは他のいかなる方法をもってしても、またいかなる理由に基づいてもゆるしの秘跡を受ける者を決して裏切ってはなりません」。
*政治家や、軍人、医者、法律家などのような特殊な職業に携わっている人たちに求められる職業上の秘密、あるいはだれにも口外しないという条件でなされた内輪話の秘密などは守らなければなりません。ただし、秘密を守れば、それを打ち明けた人やそれを聞いた人、あるいは第三者にきわめて重大な損害を与えることになるし、真実を公表することだけがその損害を回避できる唯一の方法であるような特別な場合には、例外となります。秘密を守るという条件で打ち明けられたものではなくても、他人に損害をかけるおそれのある私的な情報は、重大でそれ相応の理由がない限り公表してはなりません。
*一人ひとりの人間が他人のプライバシーを尊重するよう心掛けるべきです。マスコミの責任者は共通善のために行うべきことと個人の権利を尊重するということとを念頭に置きながら、その双方の間の公平な均衡を守るべきです。政治的あるいは公的活動に従事する人々の私生活へのメディアの介入は、そのプライバシーや自由にまで踏み込むようなものであれば、不当とみなすべきです。
2 社会的コミュニケーション・メディア
*現代社会では、社会的コミュニケーション・メディアは情報、文化の促進、教育のための重要な役割を担っています。この分野は、技術の進歩、伝えられるニュースの規模や多様性、世論に対する影響などのために拡大しています。
*メディアを用いて情報を伝達するのは、共通善に奉仕するためなのです。社会には真理、自由、正義、連帯に基づいた情報を得る権利があります。
*社会の構成員である者は皆、この分野においても正義と愛の義務を果たさなければなりません。それゆえ、また広報機関によって正しい世論つくり、それを広めるように努力しなければなりません。連帯というものは、真実で正しい情報交換と、他人を知り尊重するために役立つ思想の自由な交流との結果として生じるものです。
*社会的コミュニケーション・メディア(とりわけマスメディア)は、利用者を情報や映像に無警戒な消費者にして、受動的な心の持ち主にしてしまう恐れがあります。マスメディアを利用する者には節度と自制心とが必要です。いかがわしい影響に対して十分に抵抗できる、賢明で正しい良心を培いたいものです。
*報道を職業とする以上、ジャーナリストには、情報を流す際には真理に仕え、愛を損なわないという義務があります。彼らは、事実を正しく伝えるということと個人に対する批判的判断の限界を守るということとを等しく心がけ、そのための努力をする必要があります。中傷記事にかかわることは避けなければなりません。
*全体主義的国家は真実を計画的に歪曲し、メディアを通して世論を政治的に支配し、公判の被告や証人を「操り」、「思想犯」の名のもとにあらゆる言論を抑圧したり弾圧したりすることで、自分たちの暴政を維持できると考えています。このような政治が倫理にもとることは明らかです。
