サマリア人とユダヤ人との間には、どんな関わりがあったのでしょうか。旧約時代において、サマリアは北王国が滅亡するまで首都でした。紀元前724年、シャルマナサル五世によって北王国は攻撃され、その二年後に陥落し、さらに二年後、サルゴン二世は住民をアッシリアへ連行し、サマリアはアッシリアの属州となり、他の地域から異民族が連れて来られました。バビロン捕囚後、エルサレムを中心とするユダヤ人とサマリア人との確執が強まり、サマリア人はゲリジム山に自分たちの神殿を建てるほどになりました。こうしてエルサレムを中心とするユダヤ人とサマリア人との間には亀裂が入り、だんだん仲が悪くなっていきました。そんな敵対心を持つ背景で、今日の福音を読んでみると分かりやすいのではないでしょうか。
イエスはエルサレムへの旅の途上にあり、サマリアとガリラヤの境を旅していました。そこで重い皮膚病を患っている人に出会い、癒していきます。十人の患者がいて、九人はユダヤ人、一人はサマリア人だったのでしょう。重い皮膚病を患っていることで、その当時は他の人々から隔離されていました。しかもサマリア人はユダヤ人にとって異邦人ですが、イエスはどちらともわけ隔てなく癒していきます。こうしたイエスの寛大さの中で十人とも癒されていきますが、サマリア人であった彼だけが、イエスの足元にひれ伏し、感謝します。本来なら、重い皮膚病が癒されたので、みんな感謝しても不思議ではない状況ですが…。
前述したように、サマリア人はユダヤ人からすると異邦人であり、軽蔑もされていましたが、そんな彼が心から感謝していきます。私たちもたくさんの恵みを主からいただいているのでしょうが、感謝の気持ちをどれだけ持っているでしょうか。