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みことばの響き

羊のために命を捨てる 復活第4主日(ヨハネ10・11~18)

 羊は日本では馴染みが薄い存在ですが、アイルランドなどではよく見かける動物です。ダブリン市内からゴールウェイ方面へ西に向かって車を走らせると、車窓から放牧された羊の光景をよく目にします。羊と羊飼いとの光景にのどかさを感じます。

 今日の福音には「わたしは良い羊飼いである」というように、「良い羊飼い」の話が登場いたします。良い羊飼いは羊の声を聞き分け、群れを導いていきます。詩編23のことばが浮かんできます。

 主は羊飼い、わたしには何も欠けることがない。
 主はわたしを青草の原に休ませ
 憩いの水のほとりに伴い
 魂を生き返らせてくださる。

 羊飼いが羊を導き、命を守る情景がとてもきれいです。また今日の福音では「わたしは羊のために命を捨てる」とあります。「捨てる」はギリシア語では「ティテミ」が使われ、墓に「納める」「葬る」といった意味があります。自分自身の命を差し出す勇気や自己奉献の気持ちが数多く含まれていることばです。

 日本の殉教者の中にトマス金鍔次兵衛という司祭がいます。人々の意表をつく行動に「魔法を使う宣教師」と長崎の古い文献には記されています。迫害が厳しい時代にあって、彼は昼夜を問わず信徒のために奔走しました。昼間は長崎奉行所の馬丁になりすまして桜町牢屋を訪れ、牢屋に捕らえられていたグティエレス神父、石田神父などを訪ね、励ましています。夜になると、隠れ家で信徒にゆるしの秘跡を授けたり、ミサをささげたりしました。勇気があり、大胆で、知的で、実行力のある司祭。失望しかけている世相にあって、信徒たちに勇気を与えていきました。彼の行動によって、転んだ人たちもたくさん立ち返っていきます。

 いつの時代でも、命を差し出すほどの勇気ある姿を、よい羊飼いから学びたいものです。

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