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大名町書店「ぶどうの樹」開設に思う 德田隆仁修道士(聖パウロ修道会/サンパウロ総主事)

 2021年2月11日、聖パウロ女子修道会福岡修道院が閉鎖された。彼女らのホームページによると、シスタ一方の福岡修道院設立は1949年。福岡修道院閉鎖と共に、その72年の歴史が閉じられたことになる。またシスタ一方が、福岡で「聖パウロ書院」の活動を始めたのは1953年。その後、書院の名称は「セント・ポールFUKUOKA」に変更されるが、シスター方は、福岡教区カテドラルである大名町教会の大通りに面した場所で、長年、書院としての使徒職活動を行ってきた。しかし残念ではあるが、書院は昨年、2022年4月17日(復活の主日)をもって69年の歴史を終えた。

 女子パウロ会が、福岡の地から撤退を決めた理由についてはよく分からないが、会員の高齢化は、その理由の一つと思われる。女子パウロ会と同じ使命を持つ私たちパウロ会も、同様の問題を抱えている。現代における召命の減少、会員の高齢化は、教会から私たちに委ねられた使命の継続、実行を困難にしている。修道会といえども、後に続く者がいなければ、使命は果たせない。しかしそんな状況にあって、今後、私たちと使命を共有し、協働してくれる人たちがいるとすれば、それは信徒の方々の存在である。将来において、私たちの使徒職活動には、信徒の方々の役割はとても重要なものになると思われる。

 昨年、「セント・ポールFUKUOKA」が閉じられた後、しばらくして、福岡教区長のアベイヤ司教様から、私たちパウロ会に「女子パウロ会の書院跡を信徒使徒職のために、また福音宣教のために活用したいので、ぜひ協力してもらいたい。」という内容のお話があった。パウロ会の使徒職事業を担うサンパウロとしては、会員も社員も少ない中にあって、司教様がおっしゃる信徒使徒職が具体的にどのような活動を指すのか不明であり、協力は困難だと判断していた。しかし時が経つにつれて、福岡教区内で信徒の皆さんから、書店の復活を望む声が上がって来たとのことである。

 そうした状況の中で、昨年、2022年8月1日に、福岡教区司教館でアベイヤ司教様と再度お会いして検討した結果「書店作りとその運営であれば、パウロ会の使命であり、サンパウロとしてお手伝いさせて頂きます。」との方向性が定まった。

 新書店のオープンは、「セント・ポールFUKUOKA」の閉店から1年後となる、2023年4月9日(復活の主日)。この時点で、大名町書店「ぶどうの樹」オープンまでは、残すところ8か月であった。

 「ぶどうの樹」の運営方法については、サンパウロが運営に携わっている東京教区の「吉祥寺教会売店」、広島教区の「山ロサビエル書院」とほぽ同様である。吉祥寺教会売店の場合は、売店が小教区事務所と扉一枚でつながっているため、事務の方々が、販売も兼務して下さっている。また山ロサビエル書院の場合、山ロサビエル教会信徒のボランティアの方々が、交代で書院の販売を担当して下さっている。どちらにしてもサンパウロの従業員が販売を担当しているわけではなく、小教区の信徒の皆さんが担当して下さっている。

 今回の「ぶどうの樹」は、書店そのものは福岡教区のものであり、店舗で働いて下さる方は、「愛の十字架修道会」のベトナム人シスター、日本人信徒の方、韓国人信徒の合計3人の方々である。彼らは、福岡教区から書店スタッフとして派遣されており、サンパウロの従業員ではない。

 大名町書店「ぶどうの樹」をオープンするにあたり、店舗の内装、デザイン、什器、POSレジ設置については、福岡教区側からサンパウロに委ねられていたので、それらは私たちがお世話になっている工務店にお任せした。また通信機器関係の電話、FAX、インターネット、POSレジ等のための配線、設置については、通信システム会社にお任せした。両社と幾度となく打合せを行った結果、実際の現場工期は、今年、2023年3月1日から3月31日までの一か月間ということになった。またサンパウロが担当する商品の搬入と配置が行われるのが、その後に続く4月3日(月)から8日(土)の約一週間となった。これまでの新店舗開設における経験と勘で、それくらいの日数があれば何とかなるだろうと思ったのである。

 「ぶどうの樹」のための殆どの商品は、開設に合わせて福岡に送っていたが、それ以外に開設に必要な荷物を東京から一泊二日かけて、ブラザーたちにハイエースで福岡に運び込んでもらい、オープンまでそのまま開設作業を手伝ってもらった。また彼ら以外にも東京からは、神父とスタッフ、さらに福岡センターからは、スタッフたちに開設作業を手伝ってもらった。お陰様で、4月9日(日)、10時30分の「ぶどうの樹」祝別式までに商品を何とか店舗に並べ終え、アベイヤ司教様による祝別式の後、書店内は大勢の人たちで身動きが取れないほどの盛況となった。

 今回の大名町書店「ぶどうの樹」は、福岡教区とサンパウロの協力のもとに開設された書店である。書店開設の目的は、アベイヤ司教様、および福岡教区の皆さんが希望された通り、書店を訪れ、利用して下さる方々に対し、福岡教区の信徒の皆さんが福音宜教を行う場にすることにある。サンパウロとしては、サンパウロが持っている書店運営のノウハウを生かし、そこで働く方々の販売力を高め、求められる商品を十分に提供していくことにある。

 「ぶどうの樹」開設から、4か月余りが経過した。今のところ、福岡教区から派遣されている3人のスタッフ、および彼らをサポートするサンパウロ福岡センターのスタッフのお陰で、「ぶどうの樹」は順調な滑り出しとなっている。「ぶどうの樹」には初めて、サンパウロ直営店以外の店舗にPOSレジを導入したので、リアルタイムに「ぶどうの樹」の売上データが分かるようになっている。その結果、「ぶどうの樹」に対する商品補充は容易になっている。

 修道会への召命不足、会員の高齢化に伴い、私たちの使徒職活動は、信徒の皆さんの協力がますます必要になっている。また国内だけでなく、世界的にも書籍の売上が下がっている状況の中、サンパウロとしては直営の書店を運営していくことが困難になってきている。

 これからの私たちの一つの書店運営のあり方として、教区の皆さんのご理解とご協力のもとに、書店を共同運営していくことは大きな将来的課題なのではないだろうか。今回の大名町書店「ぶどうの樹」開設は、その一歩のようにも思われた。

⚫︎大名町書店「ぶどうの樹」
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