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カトリック入門

「カトリック入門」 第92回 平戸の聖地と集落 春日集落と安満岳【動画で学ぶ】※レジュメ字幕付き

 世界文化遺産で「長崎と天草地方」と表記すると、長崎県側では長崎市内を連想しそうだが、県内の平戸周辺にも数多くの見どころがある。「平戸の聖地と集落」については、ね根し獅こ子、春日集落、安満岳。
 平戸の中央部にひも紐さし差教会、ほう宝き亀教会があり、二つとも立派な教会。紐差教会は白亜の教会で田園風景にマッチし、とても壮麗に感じる。一九二九年に完成し、鉄川与助が手掛けた教会。外観も素晴らしいが、内部の花装飾は華やかさをさらにいろど彩る。一方、宝亀教会は山手のほうにあり、農村地帯の中からこつ忽ぜん然と現れる。教会正面はレンガ造りで、赤と白のモルタル仕上げは青空には映える。聖堂側面の左右にある柱廊はちょっと珍しい。
 二つの教会を見てから、根獅子を訪れると雰囲気が全く違う。根獅子は海水浴場でも有名で、白い砂浜がひときわ目立ち、夏場には多くの人でにぎわう。この砂浜に「昇天石」と呼ばれる石がある。説明書きには次のように記されている。「根獅子の浜のなぎさ渚に横たわる『昇天石』は、キリシタン弾圧時代に、おろくにん様一家六人が里人をかばって殉教したといわれる神聖な場所であり、畳一枚程度の平たい小岩がふたつに割れたように砂に埋もれています。」彼らはこの近くにあるウシワキの森に埋葬され、「おろくにん様」として大事にされている。そこには、「入り婿によって告発された際、『キリシタンは私たち一家だけである』と、根獅子の里人をかばって昇天石の上で殉教したとされる人たちで、夫婦と三人の娘、生まれたばかりの赤子の六人のことと伝えられています。六人の遺体は、ウシワキの森に埋葬されたとされ、今も大切な場所としてまつられています」と記されている。この森の隣には、平戸切支丹資料館がある。
 根獅子から車で十分もしない所に春日集落がある。以前はとても狭い道で、反対からトラックやバスが来るとドキッとしたが、最近は道幅も広くなり、整備されている。春日のバス停の所にさん三かい界ばん万れい霊碑がある。これはこの集落に潜伏キリシタンがいないことを示す証として、禁教期の一七六一年に建てられたものである。この先に春日の棚田がある。春日公民館に車を置いて棚田を歩いてみたが、小春日バス停の先にある春日集落案内所に車を置き、電動自転車を借りて棚田を回ると、もっと快適かもしれない。春日の棚田に入って、右回りのコースと左回りのコースがあるが、私としては左回りのコースを勧める。左回りのコースを歩くと、丸尾山まで三百メートル、春日の棚田展望ポイントまで九二〇メートルと表示されている。小高い所に小さな丸い丘があり、「丸尾さま(山)」と呼ばれている。丘の上には春日の人たちが大切にしている石のほこら祠がある。春日集落には教会堂や十字架があったとされ、集落を見下ろすこの丘では、発掘調査により、キリシタンの墓地遺構と考えられるものが確認されている。十六世紀のイエズス会の宣教師などの報告から、この場所に十字架があったと考えられる。この棚田をさらに上っていくと、江戸時代に馬を洗っていた場所、安満岳への道などがある。この辺りまで登ってくると、春日集落ビューポイントに到着する。私が訪れたのは九月中旬で稲刈りも終わり、とても静かだった。三月から四月は田植えのシーズン、八月十五日から九月十五日までは稲刈りのシーズンで、農作業車以外の立ち入りは禁止されている。どちらのシーズンも写真撮影には適しているだろうが、ゆっくりと散策したい場合には、この期間を避けたほうが賢明だろう。
 棚田の後方には安満岳(五三四メートル)がそびえている。この山には神社や寺、多くの石造物があり、古来から神道や仏教の信仰の対象とされていたことが分かる。山頂の石造物の中には、春日集落の潜伏キリシタンたちが「キリシタン祠」と呼んでいたものもある。頂上からは春日集落をはじめ、いき生つき月のたち館うら浦港方面を見ることもでき、絶景ポイントとも言えよう。ただ山頂へは安満岳駐車場から二十分ほど歩くので、少々勇気が必要。
 根獅子、春日集落、安満岳は、潜伏キリシタンの信仰に思いを馳せながら歩くのもよいし、棚田などの風景を満喫するのもよいだろう。

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