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カトリック入門

「カトリック入門」 第5回 旧約聖書について(その1)【動画で学ぶ】

1)聖書とは何か?
 聖書とは聖霊の霊感によって神のことばを書き記した書物。
 実際、聖書の中に「聖書はすべて、神の霊感によるもので、人を教え、戒め、誤りを正し、義に導く訓練をするために有益です」(二テモ3・16)
 霊感は聖書著作者における聖霊の特別な働きであって、それに彼らは、おのおのの固有の能力と素質を使用しながら、神が望むことをすべて、そしてそれだけを書くようになりました。
 聖書は、旧約聖書と新約聖書の二部からなっています。
 「旧約」という言葉は、古い契約という意味で、神がユダヤ民族と交わした契約のことです。ただ古いというのは、キリスト教徒が呼んでいるのであって、ユダヤ教の人にとっては、新約聖書がありませんので、「聖書」と呼んでいます。
 「新約」という言葉は、新しい契約という意味で、キリスト教徒がつけた呼び名です。イエスを救い主と信じるすべての者をご自分の御手(みて)に迎え入れるという神の新しい契約を信じた、イエスの弟子たちの信仰告白と喜びの書と言えます。

*聖書の日本語訳
 日本語訳はカトリックよりもプロテスタントほうが早く出来上がりました。
 プロテスタントでは、1880年に新約聖書、1887年に旧約聖書の文語体訳が刊行されている。
 カトリックでは、1910年(ラゲ訳)に新約聖書の文語体訳が刊行されました。旧約聖書が刊行されたのは、1954年から1959年にかけてです。しかも、カトリックの日本語訳は、カトリック教会が公式ラテン語と用い、四世紀末から五世紀初頭にかけてヒエロニムスによって翻訳されたブルガタ訳を底本として訳したものでした。
 口語訳となるとプロテスタントでは日本聖書協会によって1954年から1955年にかけて旧約・新約聖書が刊行されました。カトリックの口語訳全訳が刊行されたのは、1964年のことで、翻訳に携わったバルバロ神父さんの名前をとって、バルバロ訳と呼ばれたりします。そして、この翻訳はヘブライ語、ギリシア語批判版を底本にしたものではありませんでした。
 バルバロ訳に代わるカトリック側の本文批判校訂版に基づいた聖書全訳は、フランシスコ会聖書研究所から、1958年に「創世記」の分冊が刊行され、1979年に新約聖書の合本が刊行され、旧約・新約聖書が完成したのは、2011年のことです。
 1962年から1965年にかけて「第二バチカン公会議」が開催され、世界各国でカトリックとプロテスタントの共同による聖書が刊行されるようになった。日本でも1972年から6年かけて準備され、1978年に「新約聖書共同訳」が刊行されました。しかし、聖書に登場する人物の名前の表記に問題があり、種々の課題を乗り越えて「新共同体訳」の形で1987年に旧約新約聖書の合本が刊行されました。
 日本語訳にはかなりの時間と労力を注いだことになります。

2)旧約聖書
*旧約聖書は46書が含まれています。(プロテスタントは39書)
 ①モーセ五書(創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記)
 ➁16の歴史書(人類の初め、イスラエル国民の初め、旧約制度の成立などを述べるいわゆるモーセの五書を含む)
 ③7つの教訓書(旧約の神の民のすぐれた神への賛美と祈願および希望を表し、後に教会の祈りとなった詩編を含む)
 ④18の預言者の書(そのうちでイザヤ、エレミヤ、エゼキエル、ダニエルの四書は、特に大きな著作なので大預言者の書と言われる。)

 「旧約・新約聖書の霊感の与え主、作者である神は、新約は旧約の中に隠れ、旧約は新約の中で明らかにされるという具合に、賢明に計られた。」
 旧約の種々の記事、特に人類の初めに関する記事は、救済計画を歴史のような形で書かれたものとして受け取らなければならない。旧約は救い主イエス・キリストの到来を準備し、種々の前兆をもってそれを示すためである。
 旧約の後期に書かれたある本(トビト、ユディット、マカバイ、知恵の書等)が、厳密な意味で正典に属するか否かが問題になったことがありましたが、カトリック教会は、これらを正典に属するものとみなしています。

3)旧約聖書の内容

 ①モーセ五書
 ユダヤ教の人たちが律法(トーラ)と呼んでいる書物で、ユダヤ教の人たちにとっては聖書の中でも聖書ともいうべき極めて重要な信仰の書です。紀元前13世紀頃には、ユダヤ人たちはエジプトの地で奴隷の憂き目にあっていました。このユダヤ人たちを引き連れて、エジプト脱出に成功するのがモーセという英雄なのですが、ユダヤ教の信仰によれば、この書の中には、主がシナイ山の山頂でこのモーセを通して与えられた、たくさんの掟が書き記されています。掟は大別すれば、祭儀に関するものと道徳に関するものとになりますが、その道徳に関する掟の中心をなすのが、「モーセの十戒」と言われています。

 ➁歴史書
 モーセによるエジプト脱出以後のユダヤ民族の歴史が記されています。パレスチナの土地に定住し、王国を築き、一時繁栄を誇ったのも束の間、その王国が南北に分裂し、やがて北王国が紀元前8世紀にはアッシリア帝国に、南王国も6世紀にはバビロニア帝国に滅ぼされることになります。
 紀元前586年から537年の約50年間、ユダヤ人たちはバビロニア帝国の首都バビロンに捕囚の時期を送ることになりますが、しかし、バビロニア帝国がペルシア帝国に滅ぼされて、エルサレムに帰還し、自国の復興をはかることとなります。歴史書には、およそ700年にわたるユダヤ人の歴史が記してあります。

 ③教訓書
 教訓書と言われている文書には、詩や文学や箴言のような形で、人生訓や信仰生活の在り方が教えられています。

 ④預言書
 預言書と言われている文書には、預言者と呼ばれていた人たちの業績や言葉がのせられています。預言者というのは、神の言葉を預かり、これを人々に告げる役目を担った人たちのことです。
 出身は、祭司階級に人もいれば、貧しい羊飼いのような人もいて、さまざまですが、託宣の内容は、その時々の民族のおかれた政治状況により、あるときは痛烈な政治指導者への批判となり、あるときは気落ちした民を慰めるような形でなされています。

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