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みことばの響き

空になる 年間第18主日(ルカ12・13~21)

 「自分のために富を積んでも、神の前に豊かにならない者はこのとおりだ」(ルカ12・21)。貪欲に生きようとすると、本来の生き方から逸脱してしまうことを語ることばです。逆に言えば、無欲になればもっと神に近づけます。その点で今日の第一朗読は興味深いことばです。「コヘレトは言う。なんという空しさ、なんという空しさ、すべては空しい。」この世の富に頼らない生き方です。フランシスコ会訳では「空(くう)の空(くう)」と訳しています。この方が日本人には理解しやすいでしょう。この「空」は「むな(しい)」「くう」だけではなく、「そら」「から」とも読めます。無欲に生きる道筋を示すことばです。

 1998年7月30日の朝日新聞の「天声人語」の中にこんな言葉が書いてありました。寄生虫学が専門の藤田紘一郎教授は「人の体を守る常在菌も大切なのに、抗菌、除菌、殺菌と、菌はみんな悪者というイメージをコマーシャルが広めている。どろんこ遊びなどで耐性を付けさせるべきなのに『無菌状態』を目指すことで、かえってひよわになる」。能楽の梅若六郎さんは「伝統芸能の継承は、肯定しつつ受け継ぎ、否定しつつ磨きをかけ、ときに新風を吹き込むこと。その繰り返しだと、僕は思っているんですよ。新作能というだけで抵抗感のある人もおいででしょうし、新作は失敗の危険もあります。しかし、それを恐れていては新しいことなどできません」。世界でただ一人、無酸素でエベレストに十回登頂したネパールのガイド、アン・リタさんは「趣味や功名心で登っているのではない。好きで続けているのではない。家族を養うのに、これしか手段がないのだ」と。このような記事を読んでいくと、「空」のイメージが種々の側面でわいてきます。

 日本の社会の中はとても恵まれていますが、無欲になったり、「空」の気持ちだと、もっと伸び伸び生きていけるのかもしれません。

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