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カトリック入門

「カトリック入門」 第86回 長崎の教会 冷水教会と青砂ケ浦教会【動画で学ぶ】

 上五島のな奈ま摩湾をはさんだ冷水教会と青砂ケ浦教会。どちらの教会も鉄川与助が設計・施工した教会だが、雰囲気がまったく違うのが面白い。

 最初に冷水教会。この地区の信徒はそと外め海地方から移住し、潜伏キリシタンとして信仰を受け継いできた人々だが、かしら頭がケしま島教会の伝道師ドミンゴ森松次郎の働きによってカトリック信徒となった。しかし一八六八年、信徒十二人が拷問を受け、迫害が激しくなって信徒たちはしばらくこの地を離れることとなった。

 やがて迫害も収まり、一九〇七年、現在の冷水教会が完成した。建築にあたっては、近くの丸尾郷出身の鉄川与助がとう棟りょう梁となり、彼にとっては初めて手がけた木造建築の教会。八角の塔と白い板張りの外壁が、温かい雰囲気を出している。教会内は四分割のリブ・ヴォールト式の天井(リブの付いたアーチ天井)で、天井こそ低いが、鉄川与助にとっては建築の原点ともなった教会。この教会から見た奈摩湾は、光が差しているとコバルト・ブルーになってとてもきれい。

 教会の近くにはや矢がた堅め目という三角形の岩場がある。矢堅目について、案内板に次のように表示されている。「奈摩湾の入り口に位置する矢堅目は、平戸から五島の西目の海上航路の目標になっている。この地は古くから奈摩湾に侵入する外敵の見張りのために矢(守備兵)で堅(とりで砦)めた。このことにより、『矢堅目』の地名が残されている。中世末期のかん勘ごう合貿易船(室町時代におけるにち日みん明間の公式貿易)の停泊(避難)港としても知られ、松浦党の一員としてあお青かた方・奈摩両氏の間では、勘合船の海賊からの警備の任務が課せられていた。矢堅目のいり入ひ陽は、大変美しい景観である。」またこの近くには「矢堅目の塩本舗」があり、古代から伝わる伝統製法で海水塩を作っている。海水百%を原料に、蒸発法などで海水から水分を除くことによって塩分を濃縮し、一切の添加物や加工助剤を加えずに海水中の塩類を結晶化させた塩。冷水教会の近くなので、ぜひ立ち寄ったらよい所で、お土産にも最適。

 冷水教会の対岸にあるのが青砂ケ浦教会。煉瓦造りで落ち着いた雰囲気がある。
青砂ケ浦に最初の教会が建てられたのは、一八七八年のことである。その後、一度改築が行われ、一九一〇年、三代目となる現在の煉瓦造りの教会が建てられた。信徒たちは海岸から小高い丘まで、煉瓦を背負って労働奉仕を行い、教会建設に尽力した。その分、自分たちの手で建てたという思いが強く感じられる。

 設計・施工は鉄川与助が行ったが、彼にとっては、堂崎天主堂で煉瓦造りの教会建築の見習いとして関わり、自らの設計・施工で野首教会を建てた後の二作目の煉瓦造り教会となる建物。正面の入り口は、石材でデザイン的に飾り、内側の主廊の幅分を表面に突き出させて、美しさと荘厳さをかも醸し出している。教会の内部はアーケード(連続アーチとそれを支える柱廊)によって身廊と左右の側廊に分け、身廊、側廊ともに天井は四分割のリブ・ヴォールトとなっている。内部壁面は漆喰塗で、側廊窓にはステンドグラスが設けられている。対岸の冷水教会に比べ、天井が高いのでゆったりとした空間があり、落ち着いた雰囲気が自然と祈りを呼び起こす。またステンドグラスの色合いもすばらしく、日が差して床などに反射した時には、別世界のような空間を感じさせる。

 外には「平和の聖母」像が飾られ、世界平和をいつも祈っている雰囲気がある。

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