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これってどんな種?

ともに住まれるという種 復活節第6主日(ヨハネ14・23〜29)

 私たちは、好きな人、愛している人といつまでも一緒にいたいものです。そして、結婚してそれぞれの良いところ、そうでないところも含めてお互いが受け入れ合い、許し合って一緒に生活します。「『ドキドキ』とときめく相手よりも、『一緒にいると安心できる人の方がいい』」ということを聞いたことがあります。もしかしたら、この愛の中の安心がイエス様の【平和】なのかもしれませんね。

 きょうのみことばは、イエス様が「最後の晩餐」の中で弟子たちに、ご自分がいなくなってもおん父が「弁護者(聖霊)」を遣わしてくださることをお約束される場面です。弟子たちは、イエス様が自分たちの所からいなくなることを聞き、動揺し不安と悲しみに沈んでいました。彼らは、イエス様がメシアとしてイスラエルを立て直し、自分たちは家臣のようになると思っていたのかもしれません。しかし、そんな思いもなくなり、イエス様に出会う前の漁師や徴税人としての生活に戻ってしまうかもしれないと心配したのでしょう。

 イエス様は、そんな彼らに「わたしを愛する者は、わたしの言葉を守る。」と言われます。この【言葉を守る】というのは、イエス様が弟子たちに伝えられた「わたしがあなたがたを愛したように、互いに愛し合いなさい」(ヨハネ13・34)という【新しい掟】のことのようです。イエス様は、ただご自分がいなくなることを悲しむのではなく、お互いが愛し合っているところにご自分もいるということを言われているのではないでしょうか。

 イエス様の次の言葉で「わたしの父はその人をお愛しになり、わたしたちはその人の所に行き、ともに住む」と言われているように、イエス様は、いつも【新しい掟】を守っている人の所には、ご自分だけではなく、おん父が一緒にその人の住われていることを伝えられています。このことは、私たちにも伝えておられます。私たちの日々の生活の中で関わっている周りの人たちに、「イエス様が愛したように、互いに愛し合う時」そこには、イエス様だけではなく、おん父も一緒にいてくださり、【そこに住む】ことをお約束されているのです。【住む】ということですから、イエス様とおん父は、私たちが【新しい掟】を行なっている瞬間だけではなく、永続的に一緒にいてくださると言われているのではないでしょうか。

 さらにイエス様は、「これらのことを、わたしはあなた方とともにいる間、話してきた。だが、弁護者、すなわち、父がわたしの名によってお遣わしになる聖霊、そのかたがすべてこのことをあなた方に教え、わたしが言ったことを思い起こさせてくださる」と言われます。イエス様は、弟子たちと生活され、お話になられることは、いつもおん父を意識されていました。しかし、フィリポが「主よ、わたしたちに御父をお見せください。」(ヨハネ14・8)と言ったように、弟子たちには、イエス様と一緒に生活していてもイエス様が教えられたこと、示されたことがよく理解できていなかったのです。

 私たちの生活の中でも、一度聞いただけでは理解できないこともあり、文章にするか、何度も繰り返し聞き直すことで自分のものとしていきます。イエス様は、ご自分が教えてきたことを弟子たちが忘れないように【弁護者(聖霊)】をおん父がお遣わしになれられることを「わたしの名によって」約束されます。これは、イエス様とおん父の愛で結ばれた深い絆の表れであり、私たちへの【アガペの愛】でもあるのではないでしょうか。そして、その【聖霊】がイエス様の教えや行いをすべて思い起こさせてくださるのです。私たちは、もっと【聖霊】に信頼し、身近に感じてもいいのかもしれません。

 イエス様は、聖霊だけではなく「わたしの平和をあなた方に残す」と言われます。イエス様は、復活されて最初に弟子たちに現れた時「あなた方に平和があるように」(ヨハネ20・19、21、26)と言われています。イエス様の【平和】は、【赦し】と【アガペの愛】の【平和】なのではないでしょうか。イエス様は、この【平和】を私たちに「残す」だけではなく「与える」とも言われます。私たちは、その頂いた【平和】を自分だけのものとするのではなく、周りの人に対しても分かち合う使命をいただいていると言ってもいいでしょう。

 イエス様は、「心を騒がせることはない」と再び(ヨハネ14・1)言われます。イエス様は、「戻ってきて、あなた方をわたしのもとに迎えよう」(14・3)、「わたしは、あなた方をみなしごにしておかない。あなた方の所に戻ってくる」 (14・18)と何度も繰り返し言われているのですが、弟子たちの心は、悲しみと不安でいっぱいだったのです。イエス様は、「事が起こる前に」と言われます。これは、イエス様の「死と復活」を意味しているようで、イエス様が復活されて再び戻られ、一緒に住むとお約束するほど弟子たち(私たち)を愛されておられるからなのです。

 今、私たちの中には、復活されたイエス様だけではなく、おん父と聖霊が【ともに住んで】おられるのです。私たちは、この恵みに感謝と信頼のうちに、【新しい掟】を生活の中で行うことが出来たらいいですね。

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