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月刊澤田神父

「月刊 澤田神父」2022年1月号(聖パウロの「回心」)

 わたしたちは「聖パウロの回心」と呼びますが……

 1月25日は、典礼暦で「聖パウロの回心」の祝日を祝います。パウロは、それまで唯一の神への信仰ゆえに、教会を迫害していました。キリストを「神の子」と主張する教会を、神に対する冒瀆として認めることができなかったのです。そのパウロが、何らかの神秘的な形で復活のキリストと出会い、キリストを信じ、福音を宣べ伝える者と変えられていく、その出来事を祝う日です。使徒聖パウロを保護者とするわたしたち聖パウロ修道会にとっても大切な日です。

 しかし、この「聖パウロの回心」とはいったいどのようなものなのでしょうか。パウロ自身は、手紙の中でこの体験をあまり記してはいません。一方で、使徒言行録は3回にわたってこのことを記しています。また、パウロ自身にとっては、その後の人生にとって決定的な出来事だったはずなのですが、パウロ自身も使徒言行録も、この出来事を「回心」という言葉を使ってはいません。いったい、どういうことなのでしょうか。そこで、パウロがこの出来事をどのように受け止め、理解したかをたどることによって、パウロの「回心」の神秘を深めたいと思います。

ゆるしと和解の恵みとして受け止めたパウロ、そして……

 パウロは、自分から気づいて悔い改めたのではありません。実際に、あの時もキリスト者たちを捕らえるためにダマスコに向かっていました。その途上で、パウロにとっては予期せぬことが起きたのです。復活のキリストの出現です。
 その時にパウロが何を感じ、何を思ったのか。わたしたちは想像するしかありませんが、パウロにとっては本当に大変なことだっただろうと思います。自分が信じてきたことがすべて打ち砕かれてしまいました。しかし、考える間もなく、新しい現実に向き合うよう求められるのです。

 パウロは、その時の出来事の意味を間接的にですが、次のように記しています。「〔神は〕それまでに人が犯した罪を忍耐をもって見逃すことによって、人を救うご自分の義を表され」(ローマ3・25-26)た。「神こそ、キリストにおいてこの世をご自分と和解させ、人々に罪の責任を問うことなく……」(二コリント5・19)。

 わたしたちは仕事においても、人生においても、失敗を繰り返します。自分の失敗だから仕方がないとはいえ、その責任を問われます。取り返しがつかない失敗もします。ところが、さまざまな理由があるとはいえ、時に、わたしが犯した失敗の責任をともに担ってくれる人がいます。わたしたちは、そのたびに救われた思いをします。

 神は、「無償で」それをしてくださった。パウロが体験したことは、まさにそういうことだったのでしょう。パウロがそれまで神に対して、キリストに対しておこなったことは、とうていゆるされることではない。パウロ自身がそれに気づきました。神への信仰のためだったとはいえ、神の子キリストを拒絶していたのです。しかし、キリストはパウロに現れ、すべてをなかったことにしてくださった。それが、パウロの「回心」の体験なのです。

 しかし、それで終わりではありません。パウロは、この体験をとおして突き動かされます。神の無償の恵みを感じ取ったパウロは、キリストの使徒として福音のために一生をささげていくのです。

 わたしたちも、キリストの無償の恵みによってゆるされ、和解の恵みを受けます。しかし、だからこそ、わたしたちもパウロと同じように、このキリストの内側からの働きに気づき、前進していけるかどうかが問われているのだと思います。

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澤田豊成神父

聖パウロ修道会司祭。1965年、東京都目黒区生まれ。1996年、司祭叙階。教皇庁立グレゴリアン大学神学科修士課程で聖書神学を専攻、神学修士号取得。現在は編集をとおしての宣教に従事。東京カトリック神学院、聖アントニオ神学院講師。

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