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月刊澤田神父

「月刊 澤田神父」2022年11月号(新しい「ミサの式次第」)※字幕付き

日本語での新しい「ミサの式次第」の実施
 2022年11月27日、待降節第1主日から、新しく改訂された日本語のミサの式次第が実施されます。第二バチカン公会議後に、各言語でミサがおこなわれることになり、日本語の式文も準備されました。ミサのすべての式文を整えることはできませんでしたが、ミサの式次第、祈願文、叙唱、奉献文などの日本語式文が吟味され、試行版として実施されました。それが今使われている日本語のミサの式文です。
 その後、ラテン語の規範版式文もいくつかの明確化や改訂がなされました。また、各言語や文化を尊重しつつも、ミサが主キリストの晩さんと過越の神秘の記念、また教会の一致を表すものであることから、ラテン語規範版への忠実さを重視し、教会の一致を探る歩みが強調されました。わたしたちは、新しい「ミサ式次第」を実施するにあたり、この意図を忘れてはなりません。単なる式文の変更なのではなく、キリストの神秘に基づく一致と多様性を探し求める歩みであるということです。
 実際に、今回の変更箇所はいくつもの多様な理由に基づいています。ラテン語の規範版の変更を日本語でも実施すること、その中でも日本語や日本文化を踏まえてどのような式文がふさわしいかという吟味、第二バチカン公会議後に日本語としてふさわしいと考えられた式文が今もふさわしいのかという再吟味……。わたしたちは、変わりゆく世界を生きているのであり、ミサの式文の用語もそれにふさわしい言葉、訳語を模索していくように求められているのです。
 こうした経緯を踏まえ、日本語の新しい「ミサ式次第」が定められました。会衆のためには、カトリックの出版社それぞれが信徒のためにこの新しい「ミサ式次第」の式文をさまざまな形で発行しています。わたしたちサンパウロも『キリストとわたしたちのミサ』という形で、これまでの『キリストと我等のミサ』を改訂して発行しました。サンパウロの『キリストとわたしたちのミサ』の特徴は、ミサのさまざまな箇所の意味を説明しているということです。タルタリ神父様が解説を担当してくださったのですが、今回の改訂にともない、わたしに解説の執筆がゆだねられました。ありがたいこととして受け止めるとともに、わたしとしてはこれまでの解説文を尊重しながら全面的に書き換えるという作業をおこないました。その趣旨を受け止めてくださったうえで、この解説文を読み、ミサのそれぞれの箇所を深めていただければと思います。
 ただし、『キリストとわたしたちのミサ』の中ではミサの式文の変更箇所についての説明については記していませんので、日本カトリック典礼委員会『新しい「ミサの式次第と第一~第四奉献文」の変更箇所』(カトリック中央協議会)を参照していただきたいと思います。

「主は皆さんとともに」、「またあなたとともに」
 新しいミサ式文の中で変更されたこととして最初に取り上げたいのは、「主は皆さんとともに」、「また司祭とともに」とのやりとりが、「主は皆さんとともに」、「またあなたとともに」とされたことです。これはミサ式文のいくつかの箇所に出てくる表現です。
 これまで「また司祭とともに」と言われていた式文は、ラテン語規範版では「またあなたの霊とともに」です。日本の式文としては、司式者を「あなた」と呼ぶことを避けるために「また司祭とともに」という式文にしたのでしょう。しかし、ミサの中で「主は皆さんとともに」と呼びかける人は「司祭」だけではありません。わたし自身も「助祭」であった時に、福音朗読の時などにこの日本語でのやりとりに寂しい思いを感じていました。こうした種々の事情を踏まえて、「またあなたとともに」とすることが決まったようです。
 ラテン語規範版の「またあなたの霊とともに」の「霊」を日本語式文に入れなかった理由については、日本カトリック典礼委員会『新しい「ミサの式次第と第一~第四奉献文」の変更箇所』p. 16で次のように説明されています。「ラテン語規範版の直訳では『またあなたの霊とともに』となりますが、『あなたの霊』では身体を離れた霊魂を連想させるなど意味がつかみにくいため、諸外国や諸教派の式文も参考にして、これを聖書的な語法に基づく全人的な表現と受け止め、『あなた』とする訳が採用されました」。
 日本語および日本文化には「敬語」およびそれに準ずる表現があり、司式者に対して「あなた」と言うことには抵抗があると思います。しかし、ミサはキリストにおける「交わり」を表すものです。この司式者と会衆のやりとりもそれを表しています。日本語で「主は皆さんとともに」と訳されている表現も、直訳では「主はあなたたちとともに」であり、それに対する会衆の応答が「またあなたとともに」なのです。ここに、「あなたたち」、「あなた」と呼び合う親しい交わりが表現されていることを意識することが大切です。

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