私たちにとって【みことば】とはどのようなものなのでしょうか。私たちは、聖書を通して三位一体の主からの恵みを頂いています。その時どきにあったみことばから頂いた恵みに、慰められ、力を得、歩みを確かなものとするのではないでしょうか。ミサの中の集会祈願で司祭は、「きょうは聖なる日、神の語られることばが実現する日。あなたに感謝するこの集いが、わたしたちの生きる源となりますように」と唱えます。この祈りが私たちの歩みの中で確かなものとなればいいですね。
きょうのみことばは、ルカ福音書の最初の部分である箇所と、イエス様がナザレの会堂でご自分がメシアであると表される場面です。ルカは、イエス様がなさった様々な教え、出来事、そして何よりも私たちの罪を贖って十字架上で亡くなられ、そして、復活された方として惹かれ、そのことを全ての人に知らせたかったのではないでしょうか。
ルカは、福音書と使徒言行録の中に【テオフィロさま】に宛てて書き始めたようになっています。この【テオフィロさま】とは、「神を愛する者」という意味のようです。ですから、ルカは、福音書と使徒言行録を通して私たち一人ひとりに対してイエス様のこと、使徒たちの働きや、私たちがどれほど主なる神様から愛されているのかということを知らせようと思ったのではないでしょうか。
さらに、「すでにあなた方がお受けになった教えが確実なものであることを、理解していただきたいからです。」と伝えています。ルカが福音書を書いている時は、使徒たちがイエス様のことを宣教していたのではないでしょうか。そして「神を愛するもの」となった人々がその教えをより理解するようにという願いで福音書を書いたのでないでしょうか。ルカは、私たちが味わう福音書に対する心からの思いを福音書の書き出しに綴ったといってもいいのかもしれません。
さて、イエス様は、洗礼者ヨハネから洗礼をお受けになられ、さらに、荒れ野で悪魔の試みにあわれた後、聖霊の力に満たされてガリラヤにお帰りになられます。みことばに「その評判は周りの地方一帯に広まった。」とありますので、イエス様は、もうすでにガリラヤで宣教を始められていたのでしょう。それから、ナザレに行かれます。イエス様の評判は、ナザレにも知れ渡っていたことでしょう。ユダヤ人たちは、イエス様が会堂に入られた時に自分たちも素晴らしい教えを聞きたい、何か奇跡を行うのではないかという期待をしていたのではないでしょうか。イエス様は、イザヤ書を渡され朗読されます。
イエス様は、渡されたイザヤ書に目を通されある箇所に、目を留められます。なぜ、イザヤ書が手渡されたのかはわかりませんが、その箇所は、イエス様がこれからどのように宣教されるのかということを表しているところでした。もしかしたら、ここにも聖霊の働きがあったのかもしれません。このことは、私たちが聖書を味わう時にも同じようなことがあるのではないでしょうか。私たちは、みことばを読む中で、「この箇所のこの言葉が今の私の心に響いてきている。」というような体験を何度かしたことがあるのではないでしょうか。私たちはみことばを味わうことで、いつも目にしている箇所にも関わらず新しい発見をすることがあり、そこでも聖霊が働かれているのです。
イエス様が目を留められたイザヤ書は、「主の霊がわたしの上におられる。貧しい人に福音を伝えるために、主がわたしに油を注がれたからである。」という節から始まっています。これは、まさにイエス様ご自身のことが書かれていました。イエス様が洗礼者ヨハネから洗礼を受けられた後、【聖霊】に満たされ、さらにその【聖霊】によって荒れ野に導かれ悪魔の試みを受けられます。そして今度は、その【聖霊】の力に満ちてガリラヤに帰られ、ナザレに戻られたのです。イエス様は、いつも聖霊と共に歩まれておられるのです。もちろん、イエス様は、三位一体の第二のペルソナですから、聖霊と共におられるのは当たり前ですが、イエス様がおん父から人としてこの世に遣わされた方として【聖霊】の導きが必要になったのではないでしょうか。
イザヤ書の中にある、「主がわたしに油を注がれたからである」というのは、メシアのことです。イエス様は、このイザヤ書を朗読された後に会堂にいたみなから注目されます。イエス様は、彼らの前で「この聖書の言葉は、あなた方が耳にしたこの日に、成就した」と言われます。イエス様は、ここで人々に「自分がメシアである」と言われたのです。イエス様の宣教は、【貧しい人に福音を伝える】ことでした。この【貧しい人】というのは、「囚われ人」「目の見えない人」「抑圧された人」といってもいいでしょう。イエス様が言われた、「あなた方が耳にしたこの日に、成就した」と言われた言葉は、今の瞬間に私たちに告げられているのではないでしょうか。
みことばから【生きる力】を頂き、洗礼を通して頂いた【聖霊】の力に満たされた私たちは、イエス様とともに「貧しい人に福音」を伝えるという使命を忠実に果たすことができたらいいですね。
