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マスコミの先駆者アルベリオーネ神父

79. 教皇への忠誠 ――マスコミの先駆者アルベリオーネ神父

 アルベリオーネ神父は、長い生涯の間、教皇のために祈り、その意向に従って布教と司牧活動を行い、創立した修道会の会員たちにも教義と使徒職の面においても教皇に忠誠を尽くす誓願を立てるように勧めた。

 一九六四年(昭和三九年)四月四日、八〇歳の誕生日に、教皇パウロ六世は、次の手紙をアルベリオーネ神父に送った。

 「私たちはお祈りに加えて、あなたの司祭職を実り豊かなものにしようとて今日まであなたのなさってきたすべてに対してお祝いを申しそえます。また福音の栄光とキリスト教界の聖化のために、エネルギーを尽くして活発に働く修道者、一つの根源から芽生えた数多くの修道家族員にもお祝いを述べます。 使徒パウロの精神をすばらしい熱意に満たされて、あなたは聖師の快いくびきのもとに、この現代社会の生んだ技術手段を真理に奉仕させるべく働かれました。

 実に明白な方法で神はあなたの寛大な働きをよみされ、祝福されてきました。というのも、あなたのまかれた種は、涙とともに実り豊かな収穫を迎えたからです。愛する子、私たちは、あなたのうちに神の恩恵がむだにならず、もっと豊かに開花し、あなたのなしとげたものが、さらに発展されますように、お祈りを送ります。すべての善の源である神が、あなたの新しい知恵と精神力と末長く健康を与えて、あなたの諸共同体の善益と信仰の喜びのために、さらに長年生きながらえますようにお願い致します。」

 なおアルベリオーネ神父は、パウロ会の第二特別総会の間、一九六九年(昭和四四年)六月二十八日、教皇パウロ六世から「教会と教皇への功績により」(Pro Ecclesia ed Pontifecia)十字架勲章をいただいたが、その時、教皇は神父についてこう述べられた。

 「ここにおられる方(アルベリオーネ神父)は謙遜で、物静かで、疲れを知らず、いつも物事に敏感で、いつも考え深く、“祈り、かつ働け”という標語の通り、祈ってから仕事にとりかかりました。アルベリオーネ神父は、教会自身を表現する新しい方法、教会の使徒職を活気づけ、幅広くする新しい方法、現代世界において現代手段を使いこなす新しい能力、教会の使命を果たす上での新しい自覚などを教会に与えました。アルベリオーネ神父様、教皇は、この長い、忠実な、不屈の努力および神の栄光と教会の善益のためにもたらした実りを嬉しく思っています。」

 この年の八月五日に、アルベリオーネ神父は総会長の職を辞し、名誉総会長に選ばれた。一九七四年十一月二十七日、パウロ家に対する一般謁見の際に、教皇六世は次のようなことばをたまわった。

 「パウロ家のみなさん、私たちはアルベリオーネ神父の祝福された魂、恵みをたれる魂が現存しているのを感じます。私たちも個人的にこの神父を知っているのですよ。私は、単独謁見に来られた時の非常に為になる霊的な面会のことを思い浮かべます。彼は非常に深い、大変身についた謙虚さにあふれていましたので、私たちの前では立とうとはしないで、ひざまずいたままでいました。

 彼は今世紀のすばらしいものの一つとして上げられる人物であると言えましょう。なぜならそれはちょうどあなた方の現存と活動により、アルベリオーネ神父が、神の霊と自分の生活のたえまない、愛すべき、賢明な犠牲をもって何を考え、何を生産できたかを証明するものであるからです。

 私がアルベリオーネ神父の考えについて、またその家族であるあなた方について言いたいことをすべてまとめたものとして自発的に出ることばは、忠実ということです。あなた方は忠実ですか? あなた方がそうであることを私たちは熱望します。

 もし、あなた方が自分の心の中で、あたかも出版物のように次ぎのことば、つまり教皇は、私たちに忠実であるようにと勧めたということばを刻印しておくならば、あなた方は現代にもっとも合った霊能を持っているということになります。

 現代はひどく不安を感じ、また私が教会と結ばれることによって、そこから勧められる言行一致をひどくないがしろにしているのです。それであなた方の創立者の心から出た諸修道会帰属の召命に忠実であれと、私は言いたいのです。私は彼を福者にしたらあなた方は満足でしょうね。時間が必要です……。

 しかし、彼を福者にし、聖者にし、彼をキリスト教的霊的修道生活のすぐれた現象であったことを本当に見せるのは、あなた方のやることなのですよ。それで、あなた方が忠実さを持って証拠となる資料を与えなさい。彼がこれほど栄誉を与えられ、これほど感謝されるにふさわしい者であることを証明しなさい。それゆえ常にますます深く、すべての意味で忠誠と勇気と喜びを持ちなさい。この徳はあなた方の道徳および人格の向上のために、あなた方の修道会の成長のために根本的な、かけがえのない、徳なのです。」

 教皇への忠誠は、パウロ家の創立以来の伝統的な主なかなめの一つであり、その忠誠をパウロ家の会員は特別の誓願で義務として負っている。聖パウロ修道会の会憲には、次ぎのように規定されている。

「私たちの中に教会の成員としての意義を高めるために、私たちは修道誓願のきずなをもって、私たちの創立者が望んだ忠誠を、つまり教皇の教えとその牧者としての導きに忠誠を尽くす。

 パウロ会員は教皇の教えを受け入れ、教皇の指示に従い、広報機関を通じてキリストのメッセージを解説し、普及するに当たっては、教皇の教えと指示を当然優先させなければならない。

 教会の各メンバーは『ローマ教皇の真正な教導職に対しては格別な理由で』(教会憲章25)尊敬と従順を示さなければならないが、教皇に対する忠誠の誓願によって、私たちは全キリスト信者に対し尊敬と敬虔な従順な証しとなるであろう。」(会憲・指針書35~37条)

 これらの規定の根拠は聖パウロ修道会の総会文書にうまく表現されている。

 「パウロ会員は“最も献身的な子として”教会の使命に結ばれている(アルベリオーネ)。ところで、パウロ会員は手段の性質上、不特定多数の大衆に到達し、発信と反響については、はどめの効かない力を持つ手段を通じ、ぼう大な数の信条で特色づけられた歴史的な時期に、限定困難な使徒職の分野で働くように召されている。

 創立者は確実さを求めること、また教会の教導権、とくに教皇の教導権に対し、厳格に従わねばならぬということを、常に強く気にかけていた(総会文書153参照)。

 同書の一七七項はパウロ六世の「教会の責任ある権威の指導に従うことはあなた方の仕事に信用を増すだけでなく、それに見合うだけの大きな功徳にもなる」(一九六九年)ということばを引用してから、細かく説明する。

 「私たちの特殊使命を実践するにあたって、この誓願は、まず第一に私たちがカトリック信仰を安全にし、使徒職の安定した賢明な導き手となる。しかしその誓願は、教会の教導権の教えと司牧面での導きを受け入れ、広めるため、非常に積極的な意味で具体化されなければならない」(総会文書177)。

 パウロ家創立当時の教皇への忠誠についてアルベリオーネ神父は次ぎのようにのべている。

 「パウロ家が生まれた時は、在世中の教皇が介入し、正しい方向づけをしようとしたが、それに従う人は少なかった。この家族は次ぎのためにも生まれたのである。すなわち教皇の語ることを無視して、自己流に、都合のいいように教える人たち全体の救いとなるために、パウロ家は生まれた。あの人たちは使徒職の真道をカトリック信者に正しく歩ませる義務と力のある人を眼中にないのである。それでこの誓願は使徒職についての忠実さである」(総会文書177)。

 さらにアルベリオーネ神父は、忠誠の本質をこう説明する。

 「さて、使徒職に関してローマ教皇庁への忠誠の誓願に立ち帰ることは、本会の創立の精神に復帰するという意味であり、また教皇が命令し、強調し、勧め、その時々の講話で述べることに従うよう勤めなければならないという意味である。また私たは教皇のことばを宣伝し、説明することによって、教皇がそのたび毎に発案していることを実行することによって、教皇のことばのこだまになるという意味である。」

 教皇への忠誠は、教会への協力であると、次ぎのように書いている。

 「教皇の教えをくりかえして述べ伝えるたるめに、主が私たちに与えてくださった方法、そして第二バチカン公会議によって示された手段、すなわち印刷、映画、ラジオ、テレビ、その他の広報機関を用い、使徒職において常に強硬とともにあることを身に感じよう。教皇が行われる事柄、教皇への奉仕において一致し、また司教、司祭とも心を合わせよう。それは、教会へ従属し、協力することになる。」

 一九四一年(昭和一六年)五月十日、聖パウロ修道会が聖座法による修道会に昇格したことは前に述べた。この時アルベリオーネ神父はこう述べている。

 「教会が、私たちを受け入れ、承認したのだから、私たちは教会と教皇様を特別に愛そう。私たちのよって使徒職によって、教会が高揚させ、その自由を促進させるように全力を尽くそう」と。

 そして同年六月十二日、パウロ会副総会長ティモテオ・ジャッカルド神父を伴って教皇ピオ十二世のもとに感謝しに行ったのである。

・池田敏雄『マスコミの先駆者アルベリオーネ神父』1978年
現代的に一部不適切と思われる表現がありますが、当時のオリジナリティーを尊重し発行時のまま掲載しております。

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