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月刊澤田神父

パウロの福音宣教【月刊澤田神父 2023年6月号】※字幕付き

6月はパウロの月
 6月は全教会では「み心の月」として過ごします。その中心にあるのが、「イエスのみ心」の祭日です。しかし、聖パウロ修道会、パウロ家族では「パウロの月」として、この月を歩みます。6月29日が聖ペトロ聖パウロ使徒の祭日であると同時に、6月30日にはパウロ家族固有の典礼暦として使徒聖パウロの祭日を祝います。全教会にとっては言うまでもなく、わたしたちパウロ家族にとって、使徒パウロは奉献生活、キリストとの深い一致、福音宣教の使命など、すべてにおける模範です。

痛みや不自由さの中で
 さて、私事で申し訳ありませんが、こういう格好(三角巾で右腕を吊った状況)ですのでそのいきさつを話したいと思います。わたしは右肩の鎖骨を骨折しました。男女の修道会の総長・管区長たちの総会に出席するために大阪に行っていて、そこで転倒し、骨折してしまいました。ちょうど5月31日と6月1日の間の深夜のことでした。そのため、わたしにとっての今年の「パウロの月」は、この痛みと不自由さ、そこから生じるさまざまな問題に向き合う月となりました。利き腕の右腕が使えない(動かせない)というのは、これほど大変なことなのだと身をもって感じました。食事、着替え、身の回りのこと、外出時の荷物の持ち運び……。さらに、司祭にとって困るのは、ミサの時に祭服を着ることができない、そしてミサを司式する時に右手が使えないということです。ミサに限らず、典礼において、右手は重要なのです。こういう状況になってあらためて思い知らされました。

 こうした自分の状況と向き合いながら、「パウロの月」を過ごしていて、さまざまなことを考えさせられました。パウロは、福音宣教が「苦しみ」と切り離すことができないことを身をもって体験し、その意味を深めていきました。パウロは自分の受けた苦しみについて、コリントの教会に次のように記しています。「苦労したことはずっと多く、死の危険にさらされたことも度々でした。ユダヤ人から四十に一つ足りない鞭打ちを受けたことが五度、ローマ兵から鞭打たれたことが三度、石を投げつけられたことが一度、難船したことが三度、外海で一昼夜漂流したこともありました。しばしば旅をし、川の難、強盗の難、同胞からの難、異邦人からの難、町での難、荒れ野での難、偽兄弟からの難に遭い、苦労に苦労を重ね、度々眠らずに過ごし、飢え渇き、しばしば食べずにおり、寒さに凍え、裸でいたこともありました。これに加えていろいろなことがあったうえに、日々わたしたちに降りかかる心配事、あらゆる地方の教会に対する気苦労があります」(二コリント11・23-28)。パウロは、これらの苦難の福音宣教における意味を具体的に探し求めていったのでしょう。パウロは、キリストの答えを聞きます。「お前はわたしの恵みで十分だ。弱さにおいてこそ、力は余すところなく発揮されるのだ」(12・9)。だから、パウロは確信して記すのです。「ですから、キリストの力がわたしの内に宿るように、むしろ大いに喜んで、わたしは自分の弱さを誇ることにします。それ故、弱さがあっても、虐待されても、災難に遭っても、迫害や行き詰まりに出会っても、わたしはキリストのためならそれでよいと思っています。わたしは、弱っている時こそ、強いからです」(12・9-10)。

 福音宣教の歩みの中で、パウロがたどりついた確信だと思いますし、わたし自身もそうありたいと歩んできました。また、そのように人々に語ってきました。ところが、自分自身が不自由な状態に追いやられると、やはりそれを受け入れることができない自分に気づくのです。今回の骨折で、自分自身いろいろと大変な思いをし、周りの人にも迷惑をかけています。とても、これが福音宣教のためになっているとは思えません。現実の中で信仰を生きるとは、それだけ難しいことなのでしょう。

 その中で、具体的なことに目が向くようにもなりました。パウロは骨折したことはあるのだろうか。パウロが怪我をして動けない時に何をしたのだろうか。それでも動かなければならない時はどうしたのだろうか。では、わたしは今、この状況をどのように生きるべきなのだろうか。暗中模索ですが、パウロの生き方をたどりながら、深めていきたいと思います。

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澤田豊成神父

聖パウロ修道会司祭。1965年、東京都目黒区生まれ。1996年、司祭叙階。教皇庁立グレゴリアン大学神学科修士課程で聖書神学を専攻、神学修士号取得。現在は編集をとおしての宣教に従事。東京カトリック神学院、聖アントニオ神学院講師。

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