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訳文の違いから聖書を味わい直す

第3回 幼子イエスを礼拝しに来たのは「占星術の学者」、それとも「博士」?――訳文の違いから聖書を味わい直す

聖書の「フランシスコ会聖書研究所訳」と「新共同訳」の訳文の違い

第3回 幼子イエスを礼拝しに来たのは「占星術の学者」、それとも「博士」?(マタイ2・1)

主の公現

 典礼暦上、主の公現の祭日は1月6日に祝われますが、重要な祭日のため、日本を含め、多くの国では主日に移して祝います。2022年は1月2日がこの祭日です。

 主の公現の祭日にはマタイ2・1-12が朗読されます。聖書の「フランシスコ会聖書研究所訳」と「新共同訳」の「訳文の違いから聖書を味わい直す」このコラムの第3回目は、この箇所を取り上げたいと思います。

 東方で、「ユダヤ人の王」の星が昇るのを見た人たちが、この幼子を礼拝するためにエルサレムのヘロデ王のもとにやって来ます。彼らは、祭司長や民の長老たちがメシアは「ベツレヘム」に生まれると述べたこと、また再び現れた星の導きをもとに幼子イエスのもとにたどり着きます。

 この東方から来た人たちを、新共同訳は「占星術の学者たち」と訳しています。

 皆さんはこの「占星術の学者」という表現をどのように受け止めておられるでしょうか。わたしは、新共同訳が発行され、典礼で用いられるようになったときに、とても困惑したことを覚えています。「占星術」は「学問」なのか?「占星術の学者」って何? そう感じたのです。

 フランシスコ会聖書研究所訳は、これを「博士たち」と訳しています。そして、訳注で次のように説明しています。「『博士』は、『マーゴイ』(単数形マーゴス)の訳。占い、占星術、医術を行っていた学者を表す言葉であるが、ここでは一般的に占星家または天文学者と考えられる」。

 現代では、天文学や気象予報と占星術は異なるものです。しかし、古代においては、「占星術」とは単なる星占いではなく、星の動きなどを見て、今後の天気や気候状況などを予測することを含んでいました。しかもそれは、人々の生活、農耕のサイクルにとって、とても重要なことでした。学術的な知識を前提とした判断と、いわゆる占星術が区別されてはいない時代だったのです。

 今日、当時の「マーゴイ」という単語をどう訳すかは難しい問題です。しかし、フランシスコ会聖書研究所訳の訳注、および新共同訳との訳文の違いは、2000年前の考え方や生活を感じさせるヒントを与えてくれます。

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澤田豊成神父

聖パウロ修道会司祭。1965年、東京都目黒区生まれ。1996年、司祭叙階。教皇庁立グレゴリアン大学神学科修士課程で聖書神学を専攻、神学修士号取得。現在は編集をとおしての宣教に従事。東京カトリック神学院、聖アントニオ神学院講師。

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