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ご存知ですか? 12月8日は無原罪の聖マリアの祭日です

 私たちは、聖マリアの神秘の一つ、無原罪のおん宿りの神秘を12月8日に祝います(主日と重なる場合は9日)。「無原罪のおん宿り」とは、マリアがその存在の初めからあらゆる罪の汚れを免れていたという神秘です。人間は、人祖の罪により、自分の意志とは無関係に罪への傾きを持って生まれます。それは、パウロがローマの教会への手紙で述べている言葉によく表されていると言えましょう。「わたしは肉の人であり、罪に売り渡されています。わたしは、自分のしていることが分かりません。自分の望むことは実行せず、かえって憎んでいることをするからです。……わたしは自分の望む善は行わず、望まない悪を行っている。もし、わたしが望まないことをしているとすれば、それをしているのは、もはやわたしではなく、わたしの中に住んでいる罪なのです。それで、善をなそうと思う自分には、いつも悪が付きまとっているという法則に気づきます」(ローマ7・14‐21)。これこそ、教会が「原罪」と呼んでいるものです。マリアの「無原罪のおん宿り」とは、マリアが最初からこの傾きから守られていたということです。

 この神秘は、マリアが神の子イエスの母親として選ばれたことと結びついています。マリアが原罪を免れて生まれたのは、神がマリアをその使命にふさわしい者として準備されたからです。「無原罪のおん宿り」は、イエス・キリストの救いの神秘のためにマリアに与えられた、神からの大きな恵みなのです。

 神は、歴史の流れを超越して、永遠からイエス・キリストによる救いの神秘を定めてくださいました。私たちが気づくはるか以前から、神は私たちを救おうと定めてくださったのです。これは神のかぎりない愛に基づくものです。マリアが無原罪のうちに生まれてきたことも、キリストによって私たちを救おうと望まれる全人類に対する神の愛の表れと言えるでしょう。

 無原罪の聖マリアの祭日のミサで第二朗読にとられているエフェソの教会への手紙1章3‐6節、11‐12節は、このことをよく表しています。ここでは、3‐12節全体を見てみることにしましょう。この箇所で特徴的な点は、まずすべてがキリストに結びつけられているということです。ここで著者が賛美する神は「わたしたちの主イエス・キリストの父」(3節)です。神は、「キリストにおいて」私たちを祝福で満たしてくださいました(同節)。「キリストにおいて」私たちをお選びになりました(4節)。また、「イエス・キリストによって」私たちを神の子にしようとお定めになり(5節)、「その愛する御子によって」輝かしい恵みを与えてくださいました(6節)。私たちは、「この御子において」罪を赦されました(7節)。すべては、「キリストにおいて」お決めになった神の御心によるものです(9節)。こうして、あらゆるものが「頭であるキリストのもとに」一つにまとめられます(10節、繰り返し)。「キリストにおいて」私たちは、約束されたものの相続者と定められました(11節)。「キリストに」希望を置いていた私たちが、神の栄光をたたえるためです(12 節)。

 また、「前もって」という表現も特徴的です。神がキリストにおいて私たちに行ってくださったこれらすべては、すでに「天地創造の前に」(4節)、「前もって」(5節、9節、11節)神が定められたことなのです。この救いの計画が、「時が満ちるに及んで」(10節)完成されたのです。

 実に壮大な計画です。私たちの救いは、恵みによって、このような神の壮大な愛の計画の中に置かれているのです。何とすばらしいことでしょうか。聖マリアの無原罪のおん宿りの神秘も、このキリストにおける救いの計画の一部として、神があらかじめ定めてくださったものなのです。

 では、マリアの無原罪のおん宿りの神秘から、私たちは何を学ぶことができるでしょうか。まずは、罪がいかに神の救いと相容れないものであるかということです。神が、キリストの母としてマリアをお選びになり、この使命にふさわしい者として準備するためにマリアを原罪の汚れから遠ざけてくださったということは、キリストの救いと罪が対立するものであるということを示しています。キリストは、まさに私たちをこの罪のくびきから解放するために来てくださいました。先ほどのエフェソの教会への手紙の箇所の中でも、「天地創造の前に、神はわたしたちを愛して、御自分の前で聖なる者、汚れのない者にしようと、キリストにおいてお選びになりました。……わたしたちは、この御子において、その血によって贖われ、罪を赦されました」(4節、7節)と述べられています。しかし、洗礼をとおして、罪を赦され、神の前で聖なる者、汚れのない者としていただいた私たちは、どれだけ罪の危険性を感じ取り、心から罪を遠ざけようと努めているでしょうか。

 また、マリアの無原罪のおん宿りの神秘は、神がキリストの救いを実現するために、どれほど豊かな恵みを人間にお与えになるかということを示しています。「無原罪のおん宿り」は、人間が望んで得られる状態ではありません。にもかかわらず、神はマリアにこの恵みをお与えになりました。マリアが与えられた使命をふさわしく果たすことができるように、神はこれほどまでに偉大な恵みを一人のおとめに与えてくださったのです。さて、私たちは一人一人がキリストの救いに貢献する使命を与えられています。しかし、使命は単なる「務め」ではありません。使命はまず第一に「恵み」なのです。その使命を果たすためにふさわしいありとあらゆる恵みで、神があらかじめ私たちを満たしてくださるからです。もちろん、「無原罪のおん宿り」の恵みは特別にマリアに与えられたものです。しかし、マリアにこの恵みを与えてくださった神は、私たちにどのような恵みを与えてくださっているのでしょうか。

 無原罪の聖マリアの祭日にあたって、マリアをとおして実現したキリストの救いの恵みのすばらしさをたたえることにいたしましょう。そして、私たち一人一人にも与えられている恵みに気づき、それがキリストの救いの実現のために与えられているということを深く理解できるように努めましょう。同時に、救いと対立するあらゆる罪を遠ざけるように決意を新たにいたしましょう。キリストによる救いの実現のために、あらかじめすべてを見通しておられる神の計画に信頼しながら。

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澤田豊成神父

聖パウロ修道会司祭。1965年、東京都目黒区生まれ。1996年、司祭叙階。教皇庁立グレゴリアン大学神学科修士課程で聖書神学を専攻、神学修士号取得。現在は編集をとおしての宣教に従事。東京カトリック神学院、聖アントニオ神学院講師。

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