書籍情報、店舗案内、神父や修道士のコラムなど。

キリスト教知恵袋

聖書が記された言葉について

 聖書はアラム語、ヘブライ語、ギリシア語の三つの言語によって書かれています。新共同訳聖書では、カトリック教会が聖書と認める書物が「旧約聖書」「旧約聖書続編」「新約聖書」に分けて収められていますので、この区分に沿ってみてみましょう。

 まず「旧約聖書」ですが、これは大部分がヘブライ語で書かれています。そして、わずかな部分(エズラ記4章8節〜6章18節、ダニエル書2章4節〜7章28節など)が、アラム語で書かれています。アラム語は、古代メソポタミア地方において、アッシリア帝国、バビロニア帝国、ペルシア帝国の公用語として長く用いられてきた国際語です。この言語は、時代とともに帝国内外の広範な地域に浸透して用いられました。聖書のヘブライ語はこのアラム語から生まれた一方言と言えるでしょう。旧約聖書がヘブライ語で書かれているということは、ヘブライ語を日常語として使い、ヘブライ語を愛していた人びとによって、それが書き記されたということを示唆しています。国際語としてのアラム語の役割は、アレクサンドロス大王の登場によってギリシア語にとって代わられるまで続きました。

 つぎに「旧約聖書続編」ですが、ここに収められた文書はギリシア語とラテン語で書かれています。その中でカトリック教会が聖書と認めるものは、すべてギリシア語で書かれたものです。

 一方、「新約聖書」は一貫してギリシア語で書かれています。これは新約聖書を書いた人びとがギリシア語を話していたことを表しています。新約聖書が書かれた当時、世界の公用語はアラム語ではなくギリシア語に代わっていたのです。

 では、イエス様もギリシア語を話されていたかというと、そうではありませんでした。確かに当時の公用語はすでにアラム語からギリシア語に代わっていましたし、多くの都市では、ギリシア語が日常語として用いられていました。しかし、イエス様はガリラヤの寒村でお育ちになったのです。ナザレはユダヤ人ばかりが住んでいる小さな村でしたから、人びとはギリシア語ではなく、昔ながらのヘブライ語かアラム語を話していたのです。イエス様はある程度のギリシア語をお分かりになられたでしょう。しかし、ナザレの日常語はギリシア語ではありませんでした。

 新約聖書の中には、いくつかのアラム語の断片が書き留められています。「アッバ」(マルコ14・36)、「タリタ・クム」(マルコ5・41)、「エロイ・エロイ・レマ・サバクタニ」(マルコ15・34)などは、よく知られています。こうしたアラム語の断片が福音書に書き残されているのは、それをイエス様がお使いになったからだと考えれば、なぜこれらの断片が大切に新約聖書に書き残されているのか、納得していただけるのではないでしょうか。

RECOMMEND

RELATED

PAGE TOP